モテ期という辛すぎる過去

中学三年生の頃、数ヶ月だけだが、私にはモテ期があった。今では考えられない。

 

「そんな時期ない。お前が勘違いしているだけ」と言われれば返す言葉は無いが、確かにあった。

 

なぜモテたのか、シンプルに「その数ヶ月だけ顔面が良かった」のだ。

それはもう自分で鏡を見るとびっくりする程に。

 

それは「神様の気まぐれ」か「成長期の幻」かはわからない。

 

 

【モテ期の始まり】

今までの人生で周りの人が急に「顔面偏差値が上昇」した経験はないだろうか。その人が努力した訳ではなく、自然とだ。

 

そういった事は特に成長期において実際にあると思う。私が実際にそうだった。

 

もちろん朝起きて突然顔が変わる訳ではない。

短期間ではあるものの成長段階がある。

 

自分でも気付いてない様なその初期段階の頃、こんなモブ隠キャになぜか話しかけてくる女子が数人いた。

 

自惚れ発言になるが、今思えば彼女らは「株価が急騰する直前の僅かな値動きを見分ける」様な才能を持っていたのだと思う。

 

「どうしてもかわいい人と付き合いたいが、そこまで自分の力が無い」という人にはこの初期段階を見抜く力が大事だと思う。

 

 

【モテ期のピーク】

顔面の良さがピークになった時、いろいろな事が変わった。今思えば世間的にもかなり貴重な経験をしたと思う。

 

数ヶ月前までこっちを隠キャだと見下してきた女子が「◯◯君かっこいいね」などと言ってくるのだ。メスの顔をして。

 

塾に行けば入室した瞬間「カッコいい〜」と他校の女子に言われる。

今まで関わった事のないスクールカースト上位の、女子バレー部キャプテンにまで下の名前で呼ばれ、会う度にカッコいいと言われる。

 

「そんな漫画みたいな話あるわけない」と言われそうだが、実際にあった話だ。

 

あと相手の優しさの感度が100倍になる。

同じ親切行為でも相手が女子の場合「ありがとう」と感じる大きさが全然違うのだ。

めちゃくちゃ悪い言い方をすると「すぐ落ちる」と言う事になる。

 

私はモテ期の頃に「人が落ちる瞬間」を見た。もう今後見る事はないだろう。

 

その他の事としてはオタクの友人と遊んでるとヤンキーに「なんでお前あんなのと絡んでんの?お前はああいうんじゃないだろ」と言われた。

 

もう分かりきった事だが「スクールカーストは究極のルッキズム主義」だと思う。それを跳ね除ける程の明るい性格があれば別だが。

 

 

【私自身の性格は変わったか】

今思うと「そういった経験をすると、自信が身について性格も変わるかのでは?」と感じるが、私の中身は何も変わらなかった。

 

モテていた時期が短かったからかもしれない。

 

実際モテ期の頃も「嬉しさ」より「困惑」という気持ちが強かった。

 

もちろん彼女を作りたい気持ちはあったが、あたふたしている間に私のモテ期は終わっていったので、結局誰とも付き合えなかった。

 

こういった類いの学生時代の後悔は、一生続くのだと思う。

 

 

【見た目が良いとはどういう事か】

こういった経験をしたので私は「見た目が良い」という事がどういう事か理解している方だと思う。

 

モテた時期の中で一番衝撃的な出来事があった。

 

毎日私服で塾に行っていた訳だが、中身はモブ隠キャなので毎日クソダサい同じ服装で通っていた。

 

対して毎日違う服を着て、オシャレな人もいた。

 

そんな中、同じ塾の女子が「毎日違う服着てる人ってなんかキモいよね」と発言したのだ。

 

私はこの世の不条理を理解した気がした。

 

 

【モテ期の終焉とその後】

先述した通り、今までまともに女子とコミュニケーションをとった事がないので、こんな状態になっても対処方が分からず、あたふたしていたら徐々に顔面偏差値が下がっていった。

 

本当にあれはなんだったんだろうか。未だに不明だ。

 

徐々にモテなくなっても「悲しみ」はあまり感じず「安堵」さえ感じていた。

 

結局この出来事自体は、自分の人生を変える程のインパクトは無かった。

 

それから三年後、私は高校三年生になり、大学受験を控え塾に通う事になった。

 

その塾で先述したバレー部のキャプテンと再会した。居た堪れない気持ちになり、私は謝罪した。

 

謝罪するの正しい行為かどうかは別として、何かしらの行動を起こした私を褒めたい。

 

私は「三年前のあの頃に戻りたい」と思った。その日から自分を変える為の努力をした。

 

ありきたりだが、美容院に通ったり、服を変えたり等々高校生の私が思いつく事は一通りしたと思う。

 

もちろんそんな事をしたところであの頃には戻れなかった。

 

当たり前だけど、その人とは何も起きずに終わったが、一つ得た物があった。

 

それは「努力して自分を変える習慣」が身についた事だと思う。このお陰で長期で見れば人生が大きく変わったと思う。

 

 

【今どう思うか】

この話は今基本的に誰にも話さない。

 

恐らく誰も信じてくれないし、それに過去の栄光を語る行為はカッコいいものではない。

 

この経験は私にとって「良い思い出」ではなく「悪い思い出」として記憶に残っている。

 

人生を変える大きなチャンスを得ながらも、結局何も出来なかった自分を悔いているからだと思う。

 

パチンコで例えると、連続大チャンスが来たが、全部自分のミスで何も得なかった様な気持ちだと思う。

 

今は彼女もいて、それなりに楽しく暮らしている。

 

もしあの頃誰かと付き合っていたら今とは違う人生になっていたと思う。今の様に楽しい人生になっていなかったのかもしれない。

 

そう考えれば「これで良かった」のだと思う。そうは思っているが、時々思い出してしまう。